はじめに
「無農薬野菜って、なかなか手に入らないな」
この記事では、農業未経験だった私が、どのように自然農に取り組み、どんな気づきを得たのかをお伝えします。これから自然農を始めたい方の参考になれば幸いです。
スーパーで売られている野菜の多くは、農薬や化学肥料を使って育てられたもの。でも本当に安全な野菜は、自分で育てるしかないのかもしれない。 さらに、「有事の際にも自分で食べ物を作れる力を身につけたい」という想いもあり、農業未経験の私が自然農を始めることになりました。
きっかけとなったのが、川口由一さん監修の『自然農ではじめる野菜づくり』という一冊。 何を参考にすればいいのかもわからず、手探りの中で直感的に手に取った本でしたが、その直感が不思議と的を射ていて、私にとっての道しるべになりました。
今回は、この本の内容と、私自身が1年間実践してきた経験をもとに、「自然農とは何か」「初心者でもできるのか」という疑問にお答えしたいと思います。
自然農とは? 〜耕さない、草や虫と共に育つ農法〜
「自然農」とは、畑を耕さず、草や虫と敵対せず、肥料も農薬も使わない農法です。
一般的な農業では、雑草を抜き、虫を駆除し、肥料を与えて野菜を育てますが、自然農では自然のしくみそのものを活かして育てることを大切にしています。
基本の3原則はとてもシンプルです。
- 耕さない
- 草や虫を敵にしない
- 肥料や農薬を使わない
人が自然をコントロールするのではなく、自然のリズムに寄り添いながら野菜を育てる。 それが自然農の根底にある考え方です。
『自然農ではじめる野菜づくり』の内容と魅力

この本は、農業未経験の私でも読みやすく、「自然農ってどんなことを大切にしているのか」がわかりやすくまとめられていました。
特に心に残ったのは、「畑は生命の楽園」という考え方。 畑はただの食料生産の場ではなく、草も虫も微生物も、すべての命が関わり合って成り立つ世界だという視点です。
畝(うね)の立て方や草の管理方法など実践的な内容も紹介されていますが、それ以上に**「自然と共に生きるという姿勢」**が伝わってくる一冊でした。
初心者にとってありがたかったのは、「失敗してもいい」という前提があること。 農業では結果を急ぎたくなるものですが、自然農では時間をかけて土とつながり、少しずつ畑が育っていくことを大切にしています。
(以下でサンプルを読むことができます。)
自然農ではじめる野菜づくり | 本の情報 | ブティック社
雑草だらけの畑から始めた、私の自然農1年目

私が最初に取り組んだ畑は、60㎡ほどの耕作放棄地が5面。 そのうち2面を整備し始めましたが、最初に待ち受けていたのは、背丈以上に伸びたカヤなどの雑草でした。
草刈りをしても、地下には太くしぶとい根っこが残っていて、掘り起こす作業はなかなか大変。 さらに、やっと野菜が育ち始めた頃、獣害に悩まされました。 畑を囲って対策したものの、小さな隙間から動物たちが侵入し、丹精込めて育てた野菜が食べられてしまったことも。
初心者ならではの悩みだったのが、収穫のタイミング。 「もう少し待とう」「早すぎたかな」…毎回、悩みながら畑と向き合っていました。
また、周りの人から「それで本当に育つのか?少しは肥料を入れてやれ」と声をかけられることもありました。
慣行農法が当たり前の地域で、私のやり方は少し不思議に映ったのかもしれません。
それでも私は、「肥料を与えなくても、自然界では植物は育っている」という思いを持ち続け、「いま、自分の畑で実験中なんです」と笑って答えていました。
失敗も戸惑いも多かった1年目でしたが、畑はときおり私に大きな喜びをくれました。
動物に食べられてしまったサツマイモのわずかな残りから再び芽が出て、最後には収穫できたときは、自然のたくましさに心を打たれました。

自然農の魅力と、こんな人におすすめ
自然農は、土・植物・天候・生き物がすべて関わり合って成り立つ「自然界のネットワーク」を体感できる農法です。
私自身、農業の知識も道具もないところから始めましたが、1年目でも芋類・豆類・夏野菜の一部などを収穫することができました。 もちろんすべてが順調だったわけでなく、葉物野菜は土の肥沃度や虫の影響で難しかった部分もありますが、「肥料も水も与えずに野菜が育つ」という体験は、私の中の価値観を大きく変えてくれました。

自然農はこんな人におすすめです。
- 無農薬の野菜を食べたい人
- 自然界の共存関係を尊重したい人
- 手間をかけすぎず、自然と調和した農を楽しみたい人
一方で、自然農はこんな人にはおすすめできないかもしれません。
- すぐに結果を求めたい人
- 野菜の見栄えが揃っていてほしい人
- 自然のリズムより自分のペースを優先したい人
おわりに|自然農は畑づくり以上の学び
私が自然農を始めて実感したのは、食べ物は「当たり前」に手に入るものではないということです。
畑仕事を通じて、食べ物を育てることの大変さと、そこに関わる無数の生命の存在を知りました。 土の中には、虫も微生物も菌も、見えないけれど確かに生きている。 その小さな宇宙が、私たちの食卓につながっているのだと感じました。
自然農は、野菜を育てるだけでなく、自然と共に生きる感覚を取り戻させてくれます。
本記事では自然農の概要と私の体験を紹介しました。具体的な始め方や準備するものについては、別の記事で詳しくご紹介する予定です。
これから自然農を始めたいと思っている方へ。大丈夫です、初心者でもできます。知識や技術はあとからついてきます。まずは土に触れ、自然のリズムに耳を澄ませてみてください。畑で風に吹かれながら、土の匂いを感じるだけでも、きっとその魅力に惹きつけられると思います。

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