私たちは今、かつてないほど情報に囲まれて生きています。
SNSの投稿、ネットニュース、動画配信、広告、そしてAIが選んでくれる“おすすめ”のコンテンツ。日常のあらゆる瞬間に、何らかの情報が流れ込んでいます。
そんな中で、気づかぬうちに同じような意見ばかりを繰り返し目にする現象に心当たりはありませんか?
この現象は「エコーチェンバー」と呼ばれ、自分と似た意見ばかりに囲まれることで、偏った情報の中で判断してしまうリスクが指摘されています。
2025年2月に電通総研が発表した「情報インテグリティ調査2025」によると、
- 「エコーチェンバー」という言葉を知っている人は、わずか10.0%。
- 「ファクトチェックを行ったことがない」人は47.0%。
- 「情報の検証方法を学んだことがない」人は67.3%にのぼると報告されています。
出典:電通総研『情報インテグリティ調査2025(概要版)』
https://www.dentsusoken.com/sites/dentsusoken_default/files/2025-03/Information_Integrity_Survey_2025_Summary.pdf
この数字を見ると、情報の偏りや誤情報の危険性を“自分ごと”として意識している人は、まだ少数派であることがわかります。
そうであっても、不思議ではないと思います。
なぜなら、私たちは学校でも社会でも、「情報との付き合い方」をきちんと学ぶ機会がほとんどなかったからです。
この記事では、専門的な知識よりもまず、「情報にどう向き合うか」という“姿勢”の部分に焦点をあててみたいと思います。
それはきっと、「情報リテラシー」を育てる一歩目であり、流されず、振り回されずに生きるための心の土台となってくれると信じています。
情報リテラシーを育てるための7つの視点
〜エコーチェンバーやバイアスを超えて、自由な思考を取り戻す〜
ここからは、日々の暮らしの中で実践できる「情報リテラシーを育てるための7つの視点」をご紹介します。
難しい知識や特別なスキルではなく、ちょっとした意識や心がけで誰でも始められることばかりです。
1. 一歩引いて見る「冷静な視点」を持つ
SNSやニュースで流れてくる強い言葉や断定的な意見に、心が揺さぶられることはありませんか?
そうした時こそ、「これは本当かな?」と一呼吸おいて見る冷静さが大切です。
私たちは感情とともに情報を受け取ります。怒りや共感、不安といった感情がすぐに「シェア」や「賛同」につながることもありますが、その前に立ち止まる習慣が、健やかな情報環境を育てていきます。
2. 自分の「バイアス」に気づく習慣を持つ
「これは正しい」と感じる情報に出会ったとき、少しだけ立ち止まってみましょう。
なぜ自分はそう感じたのか? どんな前提を持っているのか?
そんな問いを自分に向けてみることで、自分の中にある「バイアス(思い込み)」に気づくことができます。
これは誰にでもある自然な傾向です。大切なのは、それに気づけること。
気づくことで、より自由で柔軟な思考のスペースが生まれていきます。
3. 「知らない」を恐れず、立ち止まれる力
情報に触れると、すぐに「正しいか・間違っているか」を判断しなければいけないような気持ちになることがあります。
でも実際には、世の中の多くの情報には曖昧さや未確定な部分が含まれています。
そんなときは、「今はまだ判断しない」という選択肢も、自分を守るひとつの知恵です。
「わからないままにしておく」ことを選べる人は、深く考える力を持っています。
4. 情報の「出どころ」とアルゴリズムを意識する
その情報は、誰が、何の目的で発信しているのか。
そして、私たちがそれを見ることになったのは本当に偶然なのか?
こうした問いを持つことは、情報に振り回されないための大切な力です。
たとえば最近は、政府による誤情報対策として、SNS上の情報削除や注意喚起が制度化される動きも進んでいます(2025年4月施行)。
出典:総務省『情報流通プラットフォーム対処法の省令及びガイドラインに関する考え方』https://www.soumu.go.jp/main_content/000978031.pdf
出典:総務省『特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律における大規模特定電気通信役務提供者の義務に関するガイドライン』
https://www.soumu.go.jp/main_content/000996607.pdf
これは公共の秩序維持としての側面もある一方で、選挙や政治的意図の影響、さらにその背景にある構造的な力関係(例:DS、日米合同委員会など)への視野も必要かもしれません。
さらに、SNSやニュースアプリで目にする情報の多くはアルゴリズムによって選ばれたものです。
自分が「選んだ」ようで、実は「選ばされている」。
その仕組みに気づくことが、情報リテラシーの核心だと感じています。
5. 異なる意見に耳を傾ける「対話のリテラシー」
自分とは違う意見に出会ったとき、つい「間違っている」「わかっていない」と感じてしまうことはないでしょうか。
でも、本当に大切なのはその人が「なぜそう考えたのか」を理解しようとする姿勢です。
意見が違うというだけで、誰かを否定したり遠ざけたりする社会はとても窮屈です。
理解することと同意することは、別のもの。
異なる視点に耳を傾けることが、自分の視野を広げることにもつながります。
6. デジタルだけに頼らない「感性の情報源」を持つ
情報収集というと、ついスマートフォンやパソコンが前提になりますが、
実はそれ以外にも、たくさんの「情報」は私たちの周りにあります。
自然の中を歩いたときに感じる空気の変化、友人との何気ない会話、読み返した本の一節。
そうしたものも、私たちの思考や感情に静かに影響を与えてくれます。
情報リテラシーは“感性”からも育つ。
この視点を持つことで、ネットだけでは得られない深い理解や直感も養われていきます。
7. 情報を手放す「デジタルデトックス」という選択肢
情報を扱う力を高めるには、ときに情報を“見ない”時間を意識的につくることもとても大切です。
これを「デジタルデトックス」と呼ぶこともあります。
SNSやニュースの波に飲まれそうになったとき、
スマートフォンを置いて、ただ呼吸に意識を向けたり、五感を開いて自然を感じたりしてみる。
そうした静かな時間は、情報の海で揺れる自分の軸を整える時間にもなってくれます。
おわりに|考えることをやめない力が、自由を守る
情報に溢れる社会で、もっとも大切なのは「何が正しいか」ではなく「どう向き合うか」という姿勢です。
目の前の情報に振り回されるのではなく、
「誰が、どんな意図でこの情報を発信しているのか?」
「なぜ自分はそれに反応したのか?」
そんな問いを持ち続けることが、情報リテラシーの本質なのだと思います。
そして、どんな時代でも変わらないのは、考えることを手放さない力。
私は、情報と向き合うこの“姿勢”が、これからの社会で私たちを支える
静かで力強い土台になってくれると信じています。
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